大学生のときにボランティアをしていた。
そこで、自閉症児のお出かけ活動に参加することになり、私は男性で体格も良い方だったので、ややぽっちゃり体型の男の子と1日ペアを組むことになった。
おそらく、「相手するのに力が必要」という判断だったのだろう。
その子は、自分から遊具にのぼったのだが、一番上に着いたところで何故か泣き始めてしまい、下からあがって来る子供達を蹴落しかねない勢いで逆行しようとした。
必死で止めているうちに、しばらくして他の子ども達があがってこなくなり皆別の遊具へ行ったので、無事下におりることが出来た。その後のことは、とにかく必死だった印象しかなくて、よく覚えていない。
泣き叫ぶその子を必死に抑えている間、正直「泣きたいのはこっちだよ!」という思いだった。
これが、自閉症の方と長時間一緒に過ごした始めての経験だった。
決して楽しい体験ではなかったが、何を思ったか当時の私は「このまま引き下がるのは何かくやしい」と考えたので、自閉症について勉強を始めることにした。
その後色々あって、福祉系の大学でもなかったのに、今はこんな仕事をしているで不思議なものだ。
当時の私が求めていたのは、自閉症の特性や、対応の仕方についての知識だった。
時々本を買うときは、出来るだけ大きな書店に行き、中身をじっくり見てから買うことが多かった。
そんなある日、日木流奈さんの『ひとが否定されないルール』という本が目に留まった。
「へー、そんなすごい人もいるんだ」というのが第一印象で、同じコーナーには東田直樹さんの『勇気はおいしいはず』があったが、両方買うほどの予算もないので、最初に目に留まった『ひとが否定されないルール』の方を購入した。
読み始めてみると、なんだか説教くさくてあまり興味を引く内容ではなかったので、半分も読まずに終わってしまった。だが、この時は日木流奈さんが書いたという事については、特に疑っていなかった。
その数年後、『奇跡の詩人』こと日木流奈さんに疑義の声があることを知った。
日木流奈さんのコミュニケーションは、FC(Facilitated Communication)という方法で行われているが、エビデンス(科学的根拠)が無いということも知った。
NHKで放映されたという番組動画をネットで見たときは、「何故NHKはこんなものを流して信じてもらえると思ったのか」という印象を持った。
私がこのことを知ったのが数年遅れだったのもあり、ネットには判断材料となる情報が十分にあって、世間の論調としても黒か白かすでに評価が決まっている様な状態にあった。
更に数年後、もう学生じゃなく働き始めた後のこと。
近くの施設で東田直樹さんの講演があったことを、保護者の人から聞いた。
世間話で出た話だったのと、その保護者も講演に行ったわけではなかったので、その時はすぐ別の話題に流れていった。
県の知的障害者施設協会の研修で、講師が「波動」やら、「気」やら、「仙人」の話を得意げにするしていたりするのが知的障害者福祉の実情なので、正直「あ~あ、またか」という印象しかなかった。
しかし、最近になって彼の動画(1分にも満たない短いものだが)を見て少し考えが変わった。
凄く異常な事態になっているのではないかという懸念と、冷静な意見があまりに少ないということに違和感を感じる。
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